法律における都市伝説2

tikani_nemuru_Mさんの3月29日のエントリー「八百屋お七と少年法」に以下のブログが紹介されていまして

tikani_nemuru_Mさんの紹介の仕方について「4月27日じゃなくて4月28日だろ」とか「リンク先URIとトラックバックURIを間違ってるぞ」とか突っ込む点はあるもののそこはスルーするとして、紹介ブログの著者がこれまた見事に都市伝説を信じているところに感心してしまいました。その都市伝説とは、ズバリ「少年法は、少年を成人より軽い処分で済ませるための法律だ」というものです。って、この都市伝説を信じている人はものすごくたくさんいるんですけどね。
少年法は「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年及び少年の福祉を害する成人の刑事事件について特別の措置を講ずる」ことを目的とした法律です。一方的に少年の処分を成人より軽くしているわけじゃありません。少年法によって成人より処分が軽くなっているケースもありますが、逆に少年法によって成人より処分が重くなっているケースもあるんです。一番分かりやすい例が少年法3条1項3号の規定。

イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
ロ 正当の理由がなく家屋に寄り附かないこと。
ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。
ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。

一読して明らかなように、これらは成人であればなんら問題とならない行為です。成人に対して、これらの行為を理由に何らかの処分が行われたら、人権侵害以外の何物でもありません。しかし少年の場合は、少年法の元にこれらの行為に対して保護観察あるいは少年院送致などの処分が平然と行われています(それが悪いとは言ってません)。さらに少年事件の中には刑法犯であっても成人より重い処分が行われているケースもあります。少年の刑法犯の中で窃盗事案はかなりの割合を占めますが、成人の窃盗罪は微罪処分起訴猶予、不起訴処分等が圧倒的に多く、実刑食らうのは4%ぐらいです。成人なら前述ような処分で済んでいたところ、少年であったためそうはいかなかったというケースはたくさんあります(成人の事件が起訴便宜主義を採用しているのに対し、少年事件は全件送致主義であることに注目)。「少年法は、少年を成人より軽い処分で済ませるための法律だ」なんて、どこから出てくるんでしょうね(*1)。
で、そもそもそんなこと考えなくても、14歳未満は刑事未成年で、たとえ罪を犯しても刑法上は司法は介入できないんです。にもかかわらず現実にはバンバン介入しています。これは少年法の定めによるものです。少年の犯罪行為がすべて14歳以上だというのならともかく、現実にはそんなことはないわけで、14歳未満の少年が少年法の規定の元バンバン処分されています。少年法がなければ一切の司法介入ができないものを、少年法を作ってバンバン司法介入しているわけですから、これをみただけでも「少年法は、少年を成人より軽い処分で済ませるための法律だ」というのが都市伝説に過ぎないことがわかります。


(*1)…まあ、マスコミで報道されるのは「少年法の元、成人より処分が軽くなったケース」が殆どですから、マスコミ報道ぐらいからしか情報を得ない人が「少年法は、少年を成人より軽い処分で済ませるための法律だ」と勘違いしても仕方ない面はあるんですが。