トンデモ国会議員2
約一ヶ月ぶりの更新となった。忙しいのは暇よりはましなのであるが、それにしても限度があるぞ。
以前、トンデモ国会議員というエントリーを立てたことがある。試験に通らなければ就けない職業である医師や弁護士にもトンデモがいるぐらいだから、国会議員に一人や二人トンデモがいても驚くには値しないのだが、それにしても使い捨てカイロの発熱原理が常温核融合というのにはびっくりした。こういうのを見せつけられると、国会議員のトンデモ度が判断できる何らかの出来事があればいいなと思うのだが、うまいぐあいに最近それがあった。例の国籍法の改正である。国籍法の改正自体についてはここで多くを語る必要はないであろう。
最高裁判所で違憲と判断された法令を改正するのは立法府としては当然のことであって、内容も妥当なものであるのだが、気に入らない人も一部いて、ネット上ではトンデモ主張が花盛りである。たとえば柳生すばる先生の以下のエントリー。
http://empire.cocolog-nifty.com/sun/2008/11/post-3508.html
どこから突っ込んだらいいのか悩むぐらい是の打ち所のない文章であるが、なかでもこの部分はフイタ。
「三権分立」とは言うが
日本国憲法第41条
国会は、国権の最高機関であって
国の唯一の立法機関である
と書いてある。
国会つまり議会:立法権の優位が確立されているのである!
この「国権の最高機関」なる文字列が政治的美称であり法的意味がないことは芦部憲法にすら書かれているのだが(*1)、おそらく読んでないどころか存在すら知らないのだろう。まあすばる先生のトンデモエントリーはいつものことだから笑って済ませられるが、他の情報をあたっていて、恐ろしい事を知った。すばる先生に匹敵するレベルの人が国会議員にいたのである。
http://www.love-nippon.com/kokkai_igi.htm
2008/12/05(金)
新党日本代表 田中康夫は、DNA鑑定と扶養義務の明記無き、稀代の欠陥「国籍法」改悪に、参議院本会議で反対票を投じました。
(中略)
DNA鑑定制度の導入と父親の扶養義務を明記せぬ今回の「改正」は、更なる「闇の子供たち」を生み出す偽装認知奨励法、人身売買促進法、小児性愛黙認法、即ち人権侵害法に他なりません。
「DNA鑑定制度の導入」って、男の方が認知したくない場合にどうするのだ。日本人同士でさえ、非嫡出子に対して「認知しなけりゃ養育費払わなくてすむんじゃね?」というバカ男が存在するというのに。「父親の扶養義務を明記」って、そんなもん国籍法に明記してどうするのだ。認知すれば扶養義務が発生するぐらい民法に書いてあるだろう。この人、本当に国会議員か?
流石にこのレベルの人は(国会議員では)他にはいないと思いたいところであるが、残念ながらそうはいかない。国籍法改正案まとめWIKIにこんなのがあった。
http://www19.atwiki.jp/kokuseki/pages/38.html
11月17日午後に、「『国籍法改正案』緊急対策会合及び記者会見」が開催されるようです。
こちらは、超党派の「 『国籍法改正案を検証する会合』に賛同する議員の会 」という議連が急遽立ち上がり、主催するもので、メンバーは今のところ、
<無所属>
代表 平沼赳夫 (元経済産業大臣、真・保守政策研究会 最高顧問)
<自由民主党>
赤池誠章 (衆議院法務委員、伝統と創造の会 事務局長)
戸井田とおる (厚生労働大臣政務官、真・保守政策研究会 事務局次長)
稲葉大和 (総務会 副会長)
西川京子 (政務調査会 環境部会長、真・保守政策研究会 副幹事長)
古屋圭司 (広報本部長、真・保守政策研究会 副会長)
下村博文 (国会対策委員 副委員長、真・保守政策研究会 幹事長代理)
馬渡龍治 (国会対策委員、真・保守政策研究会 事務局次長)
牧原ひでき (国会対策委員)
で、今後も増える見込みです。
この議連は、案内文に国籍法改正によって 「想定される偽装認知」 について例示していますので、それもそのまま掲載します。
一、第三国の女性を、国内の犯罪組織に所属している男性が大量認知して、売春等犯罪に悪用。(国際的に「性奴隷」と批判される)
二、国際テロリスト及びその子孫を認知することも可能になる。仮に、正規の日本国籍を取得した「日本人」がテロ事件を起こした時に損なう国の名誉は甚大である。(国際的にテロ国家と批判される)
三、現在、日本の国籍が高額で売買されている現状では、日本国内に長期滞在することを目的として、犯罪組織の男性でなくても、経済的に困窮している男性に高額な報酬で「偽装認知犯罪」が一般的に行われるであろう。
四、第三国で生活している女性が、日本の「社会福祉制度」の悪用を意図して、「特別在留許可」等の目的で第三国で生まれ生活している第三国人の子供を、日本人男性に「認知」してもらい日本入国を果たす。「改正案」には扶養の義務がないので、入国後は「育児手当」「生活保護費」など税金が使われる。
五、扶養の義務が無いことで、国内に短期滞在している第三国人女性が「特別在留許可」取得を目的として、「大金」を支払って日本人男性の子供を妊娠する可能性もある。これは「偽装認知」としての犯罪ではないので、「DNA鑑定」しても防ぐことはできない。
…本当に国会議員かこの人たちは。
扶養の義務がない扶養の義務がないって、ないわけがないだろう。認知すれば扶養の義務は発生する。国会議員が民法を知らないってなによこれ。
それ以外の部分もトンデモてんこ盛りである。「五」に至っては、国籍法改正とはなんの関係もない話である。同じことは改正前でもできるのだから。
なんというか、今回の国籍法の改正は、トンデモ国会議員を炙り出すのに非常に役に立ったようである。
(*1)…憲法/芦部信喜(岩波書店) P.263