単発絵柄(←なぜか昇格しない)

手書き文書と異なり、パソコン等で文書を書く際に漢字を入力する場合は、漢字直接入力で入力する人は少数派で、大抵の人は読み仮名を入力して漢字に変換します。それを利用した軽いジョークに「なぜか変換できない」というものがあります。代表的なのは以下のようなもの。

雰囲気は「ふんいき」、体育は「たいいく」と読むのですが、話し言葉では「ふいんき」「たいく」と発音する人が多いです。でもその発音をそのまま入力しても当然変換できません。それを面白く捉えたジョークというわけです。ちょっとひねったものでは以下のようなものもあります。

上記の「おおさかふ」は大阪府を、「びわこ」は琵琶湖をそれぞれ元ネタにしていますが、「おおさかふこどもウェブ」「びわこ放送」の正式表記はどちらも平仮名。変換しないのが正しいです。
それをさらにひねったものに「なぜか変換できる」というものがあります。たとえば以下。

  • せんたっき(←なぜか変換できる)

母音「u」は、直後の子音によって促音化します。「六秒」「六人」はそれぞれ「ろくびょう」「ろくにん」と発音しますが、「六分」「六件」は「ろっぷん」「ろっけん」と発音します。これはそれぞれ子音「p」「k」によって母音「u」が促音化したものです。もちろん例外はあって、「食パン」は「しょっぱん」ではなく「しょくぱん」と発音するケースが圧倒的です。洗濯機の場合、促音化の原則通り「せんたっき」と発音する人もいれば、例外扱いで「せんたくき」と発音する人もいます。どちらが圧倒的に多いということはなく、それを面白く捉えたジョークです。それの応用系が以下。

  • てんかぢゃや(←なぜか変換できる)
  • あきばはら(←なぜか変換できる)

地名の「天下茶屋」「秋葉原」は、それぞれ「てんがちゃや」「あきはばら」と読むのが正しいのですが、「てんかぢゃや」と入力して変換しても、仮名漢字変換では「てんか」と「ぢゃや」をそれぞれ「天下」「茶屋」と別々に変換し、結局正しく変換できてしまいます。そこを面白く捉えたものですね。
さてこの「変換できる/できない」で個人的に面白く感じていたのが、漢字変換ではなくローマ字変換です。以下IMEの場合限定ですが、ローマ字変換は結構幅広く対応していて、基本は訓令式のようですが、ヘボン式で入力しても大抵変換できます。しかしながら、その「大抵」にも例外はあります。

  • (例外その1)「ch」の前の促音

「こっち」をヘボン式ローマ字で表すと「kotchi」になるのですが、これが「なぜか変換できない」。「促音を表す場合は直後の子音を重ねる」という原則を、「ch」の場合でも徹底しているようです。「直後の子音がchの場合はcchではなくtchになる」という規則を取り入れられない理由がなにかあったのでしょうか。

  • (例外その2)「b」「m」「p」前の撥音

撥音はヘボン式ローマ字では通常「n」で表しますが、直後の子音が「b」「m」「p」の場合には「m」になります。難波(Namba)、天満(Temma)などですね。これに対応していない理由はわかります。天満(Temma)を見ていただければわかりますが、この「(てんま)Temma」という表記は「てっま」と区別がつかないのです。早い話が一つのローマ字表記が複数の平仮名文字列に対応しているわけで、キーボードからのローマ字入力でそれに対応することは不可能ですから、やむを得ないでしょう。
この「一つのローマ字表記が複数の平仮名文字列に対応している」という問題は長音の場合にもありまして、ヘボン式表記には長音を表す表記がありませんから、「戸山」と「遠山」と「東山」がすべて「Toyama」になります。平仮名ならすべて別々の表記なのに。パスポートはヘボン式ですから、困っている人もいるのではないでしょうか。
上記はヘボン式の例外ですが、訓令式にも「なぜか変換できない」例外があります。

  • (例外その1)旧平仮名

訓令式では「wi→ゐ」「we→ゑ」なんですが、これが「wi→うぃ」「we→うぇ」になります。まあ、旧平仮名なんてまず使いません。「wi」や「we」は「ウィスキー」「ウェスト」等の外来語を書きたいときに使うのが主ですから、こちらの方が便利ですね。

  • (例外その2)拗音

拗音の例外は多すぎて書ききれないぐらいなんですが、たとえば合拗音の「ふぁ行」。訓令式では「hw」なんですが、これが変換できません。「hwa→hわ」になります。この理由は全然わからないのですが、私の場合ふぁ行は「f」を使うため全然困りません。おそらく多くの人がそうじゃないかと思います。
で、IMEローマ字変換では逆パターンの「なぜか変換できる」というものもあります。ローマ字にはいくつかの記述方式があって、代表的なのは訓令式ヘボン式、日本式あたりですが、そのいずれにも当たらない例外表記が変換できてしまいます。

  • (例外その1)通常使わない子音+母音

「c」のような、通常のローマ字表記で使わない子音+母音で平仮名に変換できます。
「c+母音」→かしくせこ
「q+母音」→くぁくぃくくぇくぉ
理解できなくもない変換ですが、意味があったのでしょうか。

  • (例外その2)拗音

拗音には前述したように書ききれないぐらいたくさん例外があります。たとえば複合拗音の「ふゅ」ですが、訓令式では「hwyu」なんですがこれは変換できません。ではどうすれば変換できるのかというと、「fyu」で変換できます。しかも、「fy」はすべての母音との組み合わせが有効です。
「fy+母音」→ふゃふぃふゅふぇふょ
となります。
拗音にあまりに多くの例外があるためか、拗音に使う「小さい文字」を単独で変換する方法が用意されています。「xまたはl+文字」です。「l+母音」は「ら行」に変換する方式もありますが、IMEでは小さい文字に変換します。
「xまたはl+母音」→ぁぃぅぇぉ
「xまたはl+や行」→ゃゅょ
「xまたはl+わ」→ゎ
「小さい文字を使う」という点では促音も同じですから、「っ」も同じ方法で変換できます。
「xまたはl+つ」→っ
ところがこれには面白い例外があります。「つ」は訓令式では「tu」、ヘボン式では「tsu」なんですが、「xまたはl+tsu」では「っ」に変換されません。「っ」を単独で変換しようと思うと「xtu」「ltu」どちらかでないとできません。
このようにいろいろな例外があると混乱するかと思えば、そうでもないようです。実際私はあまり困っていません。そもそも私の場合、ローマ字の文章を作るときならともかく、平仮名を入力する際にローマ字を使う場合は、訓令式とかヘボン式とかにこだわりません。「ふ」を「hu」でなく「fu」で入力しているあたり基本はヘボン式だと思うのですが、「つ」や「し」はそれぞれ「tu」「si」で入力、「じゃ」や「ふぁ」はそれぞれ「ja」「fa」で入力します。タイプが少なくなるようにしてるんでしょうね。
ただそういうのに慣れてしまうと、あえてローマ字綴りをそのまま記述する場合は、普段入力している綴りとは別の綴りを入力しないといけないので、少し面倒です。そういう意味では、今回のエントリーのいくつかの記述は、いつもどうり(←なぜか変換できない)の入力をしなかったので手間がかかりました。