他人の迷惑を考えろ

グリーンピースジャパン(以下GPJ)が自身のサイトに横領鯨肉の証拠品確保についての声明文をアップしました。

内容について、GPJが当該鯨肉を横領品だと決め付けるのはまあいいでしょう。私としては、前回書いたように現時点で横領だと推認させる特段の事情は見当たらないと思いますが、共同船舶側の主張だっていわば当事者の主張に過ぎません。もし横領行為があった場合、共同船舶側はなんとか誤魔化そうとする可能性はありますから、共同船舶側の主張が無邪気に信じられるというものではないです。なので、現時点でGPJ側が横領だと決め付けた主張を行うのは理解できます。ただし、GPJ側から共同船舶側の主張がウソであると推認できる根拠はあげられていません。それに対し、共同船舶側の主張には無理がなく、両者の主張を比較すると、共同船舶側の主張に説得力を感じます。
ただ、それをさておいても気になってしまうのが以下の部分です。

その荷物は西濃運輸株式会社(以下、西濃運輸)の青森支店敷地内から確保しましたが、当時これにおける西濃運輸からの許可は得ておらず、同社にご迷惑をおかけたことに対して心からお詫びを申し上げます。お詫びと説明は、事後に口頭及び文書にて同社に申し伝えております。なお、私どもによる宅配物の確保は、その物的証拠なくしては不正行為を公表し正すことが非常に困難であると判断したため、他の選択肢がない中やむを得ず行った行為です。2008年5月20日現在、私どもはその荷物を検察庁からの指示のもと厳重に保管しております。

「その物的証拠なくしては不正行為を公表し正すことが非常に困難であると判断した」のはいいでしょう。そこでなぜ、トラックターミナルから盗み出したのでしょうか。そんなことをすれば西濃運輸に迷惑がかかることを考えなかったのでしょうか。後から「心からお詫びを申し上げ」たからといって済む問題ではありません。今回の件が、GPJの主張するように横領であるとしたら、乗組員は鯨肉を盗まれても自業自得です。しかし、西濃運輸はそうではありません。今回の件がどれだけ重大な横領行為であろうとも、西濃運輸に迷惑かけていい理由にはならないのは、GPJも理解しているはずです。謝罪しているぐらいですから。
「証拠品を確保するため」なら、なぜトラックターミナルから盗み出す必要があったのでしょうか。GPJも配送先住所は確認していたはずです。ならば、トラックターミナルから盗み出すのではなく、配送先住所に先回りして、受取人が受け取った直後に飛び出してひったくればいいじゃないですか。そうすれば西濃運輸に迷惑はかかりません。
もちろんひったくりは悪いですよ。悪いですけど、それを言えばトラックターミナルから盗み出す行為だって悪いんです。そして、その行為についてGPJ側は、横領の証拠品を確保するためで違法性はない、としているんです。ならば、ひったくりだって「横領の証拠品を確保するためで違法性はない」のではないでしょうか。それとも、「トラックターミナルから盗み出す行為側は横領の証拠品を確保するためで違法性はないが、受取人からひったくる行為は横領の証拠品を確保するためであっても違法性がある」と主張するのでしょうか。
もちろん、配送先住所に先回りしてひったくることに比べれば、トラックターミナルから盗み出す方が楽でしょう。荷物受け渡し現場を押さえるのは手間がかかります。だからといって、もし「西濃運輸に迷惑をかけないようにするのは手間なので、迷惑かけてから謝りました」という手段をとったとでもいうのなら、人として腐っています。少しぐらいの迷惑なら理解できなくもないですが、今回西濃運輸側が被った迷惑というのは「顧客の信用を損ねる」ということで、「少しぐらい」といえるものではないからです。
私は、今回の件について一番の被害者は西濃運輸ではないかと思っています。その西濃運輸ですが、今回の件についてなにも公式発表はしていないようです。GPJに対する正式な抗議もしていません。本来ならば、GPJに厳重抗議し、なぜこのようなことが起こったのか、今後どのような防止策を講じるかなどを積極的に発信して、顧客の信頼を取り戻さねばなりません。しかし捜査中の事件であるためあえて沈黙しているのでしょう。それ自体は賞賛に値する態度だと思います。しかしなんといいますか、GPJはそれをいいことに好き勝手言ってる、と感じてしまいます。