光市母子殺害事件再び

この事件に関してはあとは判決を待つだけで、いままでのエントリーのまとめ以外に特に書く気はなかったのですが、昨日のエントリーにいくつかコメントを頂いたのでそれに関する見解を書きます(ネタを考えずに済むという利点があるw)。
まず第一にですが、
(1)被告人が何らかの主張をすることの是非
(2)被告人の主張内容の是非
(3)弁護人が何らかの弁護をすることの是非
(4)弁護人の弁護内容の是非
これらは別の問題です。これらが別の問題であることがわからない人は、すなわち問題点の切り分けをする能力に欠ける人ということであり、何らかの主張なり議論なりをする能力に欠ける人といっていいでしょう。


さて、罪を犯したと疑われる人に対しどのような処遇をするべきかというのはいろいろな考え方がありますが、とりあえず日本(及び多くの諸外国)で採用されているやり方のひとつに、「被告人に十分な防御の機会を与えた上で有罪と証明されない限りは有罪としない」というものがあります。もちろんこれはやり方のひとつに過ぎないので、たとえば「捜査機関が公開した内容に基づいて多くの人が有罪と判断したなら有罪とする」とか「被告人に熱湯に手を入れさせて、やけどしたら有罪とする」とかいうのもひとつのやり方として成立しますし、どれがいいかは(過去の歴史等を省みて慎重に判断せねばならない問題ですが)究極的には好みの問題です。
どのやり方がいいのかは好みの問題ですが、いったん「このやり方にしよう」と決めたのなら、「そのやり方に沿っているかどうか」は好みの問題ではありません。その「やり方」に照らし合わせて、客観的に判断できるものです。


現在採用されているやり方のひとつに、「被告人には言いたいことを言わせる」というのがあります。被告人はどんな弁解をしてもかまいません。もちろんこれは「どんな弁解でも受け入れられる」という意味ではありません。被告人の弁解が自分の罪を隠したいだけのウソデタラメの羅列に過ぎないのなら、そのようなウソデタラメを並べ立てたしっぺ返しは(判決という形で)自分に返ってきます。返ってきますが、そのようなウソデタラメでも言いたければ言っていいのです。有名な言葉をもじって言えば「君の弁解は荒唐無稽であり到底信じられるものではない。しかし君がそのような荒唐無稽な弁解をすること自体は守られなければならない。」というあたりになります。これが最初に書いた(1)と(2)が別問題である理由です。(2)が非だからといって、(1)が非とはならないのです。
また、以前のエントリー(刑事弁護人の役割)を合わせて読んでいただければ、(1)〜(4)のすべてがそれぞれ別の問題であることがわかるのではないかと思います。


以下、引用は昨日のエントリーのコメント欄から

  • バカブログさん

不適切って、自分の好き嫌いだろ!
バカか、おまえは

いえ、「どのような制度がいいか」は好みの問題ですが、「ある制度の中で、ある行為がその制度内のルールに沿っているか」は好みの問題ではありません。また、個人の脳内事実に基づく批判(弁護団死刑廃止論のためにこの裁判を利用しているとかetc)は適切な批判ではありません。これが好き嫌いの問題に見えるのなら、バカブログさんの前提知識に大きな問題があると思われます。

  • ?さん

なんというか、あの弁護団を擁護すること事態が理解できない。
弁護団の身内の方ですか?

私が被告人及び弁護団の主張内容を支持できないこと(言葉を選ばずに言えば「わあ、ウソくせぇ」と思ったこと)は以前書いたのですが、どんなに荒唐無稽な主張であろうと、そのような主張をすること(細かく言えば、被告人が言いたいことを言い、弁護人は被告人の主張に基づいて最大限の弁護をすること)が妨げられてはなりません。もし?さんが「主張内容そのものの是非」と「そのような主張をすることの是非」が別の論点であることがわからないのならば、理解できない原因はそれだと思います。

  • !さん

お前が事件の被害者だったら良かったのにな。
殺されても、ドラえもんがどうのこうのって言われたら、納得出来るんだろ?

!さんも「主張内容そのものの是非」と「そのような主張をすることの是非」が別の論点であることがわからないのでしょうか。いかに弁護人自身がドラえもんを信じていなくても、また仮にその言い分をウソくさいと感じていても、被告人がそう言い張るのならば、そのような主張をすること自体は守られねばなりませんし、弁護人はそれ(被告人の意思)に沿って弁護しなければなりません。私自身はドラえもんがどうのこうの言われても納得できませんが、被告人がそれを言うこと及び弁護人がそれに沿って弁護すること自体は守られねばなりません。
もちろん守られねばならないのは「主張すること」自体であって、その主張を受け入れねばならない理由は何もありません。その主張が受け入れられるかどうかは別問題です。

  • マジで

マジで妄想日記だなw

素直でしょw?