懲戒請求その1

弁護士への懲戒請求は誰でもできる。できるが、これは「負担なくできる」とか「無責任にできる」という意味ではない。自分がなにか希望したときに、自分は意見表明しさえすれば、あとは他人が何でもやってくれて、無責任に構えていられればいいな、というのはただの甘えであろう。必要があれば事情徴収に応じないといけないし、懲戒理由がなく、きちんと調べればそれがわかったにもかかわらず懲戒請求を行った場合は、不法行為となり得る。その場合、対象弁護士に損害を与えたならば損害賠償の必要も出てくる。
しかし世の中には、そう考えない甘えん坊も何人かはいるようである。

開封すると、驚いたことに
 札幌で行なう事情徴収への出頭命令
遠隔地に出頭できるわけがありません。
私(野田すか)の居住地が北海道から見て遠隔地ということもあり、
出頭を断ってくることを見越しての戦略。
出頭せずしての懲戒請求棄却。
シナリオ的にはそんな感じですかね。

「遠隔地に出頭できるわけがありません」って、札幌弁護士会懲戒請求を出したのは自分なんだから、自己責任である。それともこの人は、「自分の所へ来い」とでも言いたいのだろうか。自分が何をしているのか理解できているのか?
先日紹介した南雲さんのブログで、コメントした人に南雲さんが以下の疑問を提示されていた。

南雲研究室 − 人権派弁護団は末期症状か(山口県光市母子殺害事件考のコメント欄から

それはそれとして、この問題でいくつかの疑問があります。
・市民は懲戒請求をしてはならないということなのか。
懲戒請求相手先が裁判を抱えている間は請求してはいけないのか。
・「裁判に欠席したから」と言うことでは絶対に請求理由にならないのか。
・橋下発言を直接見て請求した人は何人(何件)あるのか。
その中でどれだけの人(件)が「中身がわからずに請求した」のか。
・「請求しましょう」と言った(あおった)が自分は請求しなかったことに法的な問題があるのか。
日弁連では請求があったものは全て受理するのか。
・請求制度は何のためにあるのか。
・kenji47さんは「素人は請求するな」と言っているのか。

質問されたのは(質問文からわかるように)kenji47さんという方なのだが、この疑問に対する私の見解をここに記しておこう。
・市民は懲戒請求をしてはならないということなのか。
まったく問題ありません。ただし、誰であろうと、懲戒理由がなく、きちんと調べればそれがわかったにもかかわらず、懲戒請求してはいけません。
懲戒請求相手先が裁判を抱えている間は請求してはいけないのか。
まったく問題ありません。ただし、懲戒理由がなく、きちんと調べればそれがわかったにもかかわらず懲戒請求するのは不当ですので、その場合、自分の不当行為にとって迷惑を被る人が多くなります。
・「裁判に欠席したから」と言うことでは絶対に請求理由にならないのか。
なります。ただし、光市弁護団でこれに該当するのは安田弁護士と足立弁護士の二人だけです。
・橋下発言を直接見て請求した人は何人(何件)あるのか。
その中でどれだけの人(件)が「中身がわからずに請求した」のか。
今後裁判で明らかになっていくと思いますが、「橋下弁護士の煽動に乗ったわけでなく、自分の判断で不当な懲戒請求をした人」は、橋下弁護士に責任を被せられないので、自分で責任を取ることになりますね。
・「請求しましょう」と言った(あおった)が自分は請求しなかったことに法的な問題があるのか。
ありません。
日弁連では請求があったものは全て受理するのか。
最初から日弁連に懲戒の請求をすることはできません。
・請求制度は何のためにあるのか。
弁護士法をお読みください。
・kenji47さんは「素人は請求するな」と言っているのか。
kenji47さんではありませんが回答しますと、素人であろうとなかろうと、懲戒理由がなく、きちんと調べればそれがわかったにもかかわらず懲戒請求を行ってはいけません。