批判するということ

言論の自由というのは誰にでもある。あるが、言論の自由というのは「何を言っても批判されない自由」でもなければ「間違ったことを書いても指摘されない自由」ではない。批判する側にも言論の自由があるのは当たり前の話しであるし、大体、自由な批判が行われるからこそ、自由な言論行為は価値のあるものとなるのだ。どのような言論に対してでも自由な評価を行うことができ、評価もまた評価される。筋違いな批判を行えば、それもまた批判の対象となろう。批判に限らない一般的なことだが、私が言論行為をなすにあたって心掛けていることがある。他人の言論に言及する場合は言及するポイントを明らかにし、出所をきちんと開示することである。それをしないと、読者は私のなした言論の妥当性が判断できない。言及している相手にも失礼である。何に対して言及しているか明らかにせず、出所も開示しないのは、言論をなすにあたって非常に行儀の悪い行為だと思う(*1)。
とはいえ、世の中には様々な価値観の人がいて、なぜか「批判されるのが嫌だ」という人がいる(*2)。言論を公開しておいて「どんなに間違ったことを書いても批判するな」というのはただの我侭に過ぎないのだが、そのような我侭でも配慮してあげたいという人はいるもので、以下はユージさんという方の開設しているブログ「いつも心に格言を」の中の「価値観云々の記事。」に書かれていた、ちゃんちゃんさんという方のコメントである。

リンクに関しては、僕はやはり、「無断リンクはOK、ただし用い方にもよりけり」で、「良い内容のリンクでも、許可を取ってした方が良いし幸せ」という認識です。

公開された言論についての言及は自由に行えるので、「批判する場合には相手の許可を取ってから批判する」というのももちろんOKである。なので、ちゃんちゃんさんがそのような考えを持っていても別に他人が文句をいう筋合いではない。しかし、ちゃんちゃんさんは自身のブログにおいて以下のコメントを書かれた。

>専門バカも,ここまで来れば専門もバカと言わざるを得ませんね。今被告席にいるのは,こんな奴らの存在を許している司法制度そのものですよ。
 本当ですね。 某弁護士のブログを見ていると本当にそう感じます。勝手な正義感と理屈。それが正義だと信じているんだから本当にバカと言わざるをえません。
(引用者注:引用内引用文は同エントリー内に付けられた桑田賢一さんという方のコメント)

ちゃんちゃんさんが「無断でリンクはしたくない」「無断で批判したくない」と考えるのは自由なのだが、このような「ほのめかし」はもっと行儀が悪いと思える。「某弁護士」という書き方もそうだし、ブログの内容のことならきちんとどのブログかURI開示して批判するべきだろう。そうしないと、読者にはちゃんちゃんさんの批判が正当なものか不当なものか判断できない。批判するべきならきちんと批判するべきで、このような形で「ほのめかす」ことは行儀が悪いと思う。「無断でリンクはしたくない」「無断で批判したくない」と思うのなら一切批判しないという態度の方が一貫性がある(実はこのちゃんちゃんさんという方は、以前に私が彼のブログのエントリーをリンクした際に「許可なくリンクするのはマナー違反だ」とまるで私が不当な行為をしたかのごとく論ってきたことがあり、その後きちんと謝罪されたので「見所があるな」と一目置いていた人である)。
こういう発言を読んで、他人の意見を批判するときこそ、自分はいっそうきちんとした態度をとるべきだと思い直した。

(1)…引用の際に出所を明示しないのは違法なのだが、ここではそれは考えない。「法律に違反しているから」という理由だけでダメだというのは、法律真理教信者の主張である。
(2)…批判してもらえるなんてこの上なくありがたいことだと思うのだが、感性は人それぞれである。