刑事法の大原則

刑事法の分野にはその理念に基づく二つの大原則がある。刑事実体法をつらぬく大原則が「罪刑法定主義」、刑事手続法をつらぬく大原則が「法定手続の保障」である。これらは、日本が民主主義国家である以上、国家には必ず守ってもらわなくてはいけない大原則である。
罪刑法定主義とは、「どのような行為が犯罪となり、その場合の刑罰はどのようなものかがあらかじめ法律によって定められていなければならない」ということである。この原則が求められる理由はいくつかあるが、簡単に書くと

・どのような行為を犯罪とするかを決めるのは国民であり、それは代表者で構成された議会によって定められるものである
・どのような行動をとっていれば刑罰を受けないかが明らかになって、はじめて国民は自由に行動できる
・国家による刑罰権の恣意的な行使を防ぎ、国民の自由と権利を守る

となる。
法定手続の保障は、「刑罰を科す場合には、適正な法定の手続に従わなければならない」というものであるが、これは

・刑事法は、権力と市民との間を規律する法である
・刑罰を科す手続は、警察(捜査機関)と検察(訴追機関)に独占されている

ことから、これまた当たり前の考えである。
これらの大原則は、日本が自由民主主義国家である以上、世論(いわゆる「世間の空気」)がどうであろうとも、国家権力には必ず守って頂きたい。これらが守られないようでは日本が日本でなくなる。これらは、法律以前の理念である
光市母子殺害事件弁護団への(筋違いな)批判を繰り返す人たちに、あなたは民主主義国家としての日本の理念を知っているのかと聞いてみたい。知りもしない、知りたくもないのではないかとつくづく思う。彼らが望んでいるのは民主主義でなく全体主義かもしれない(参考「橋下徹弁護士を弁護する!Empire of the Sun太陽の帝国/柳生すばる)。