通じない人たち

弁護士の開設しているブログにもいろいろあるが、私が特に面白いと思っているのは「元検弁護士のつぶやき」である。このブログはその名のとおり、元検弁護士であるモトケンさんが開設しているブログで、さまざまな話題が書かれており参加者も多い。光市母子殺害事件やその弁護団への懲戒請求の件などについてもエントリーが立てられている。
そのモトケンさんのブログで「弁護士の品位」というエントリーが立てられた。内容は、橋下弁護士のブログを紹介したものである(ここ)。まあ、橋下弁護士のブログを読んで普通に感じることが書いてあるだけなのだが、そこに一般人という方の変なコメントがついた。

橋下さん頑張ってください。昨日応援メールも送りました。ここにいる人は世間の風が読めない人ばかりだから困ります。
橋下さんの答弁書見ても、なるほど相当な事実上の法律上の根拠がある事を確認しました。これでマナー違反だと認識して出した懲戒請求が不法になったら恐ろしい社会になります。それこそ一体何がマナー違反に当たるか当たり外れにビクビクしながら懲戒請求しないといけないわけだから、そんな恐ろしい法制度は見たことありません。(笑)
(No.2 一般人 さんのコメント | 2007年09月23日 18:39 | CID 80694)

一読して、なんだこれは?と思った。これが刑事司法を知らず世間の風に流される人のたわごとしか書いてないブログ(たとえば「橋下弁護士を応援しましょう!」(*1))ならわかる。しかしこれはモトケンさんのブログである。モトケンさんの書いた文章をきちんと読めば、このような見解は出てこないはずである。特に

橋下さんの答弁書見ても、なるほど相当な事実上の法律上の根拠がある事を確認しました。

という発言にいたっては、この人は日本語が読めないのか?という疑問を抱かざるを得ない。

しかしである。その後のコメント

しかし空しいですね。ここでいくら橋下さんを非難し、馬鹿にし、論破しても、世間は誰も橋下さんに懲戒請求出さないんですからね。悔しくてたまらないのか、もしくは世間を見下す事で殻に閉じこもり自分を安心させてるんでしょうか。
小林よしのりさんが言論界で馬鹿にされ非難されてもビクともせず、逆に非難してくる市民団体を踏み台にして一気に人気者になった事態を重ねながら見守っています。面白いです、この状態。
(No.13 一般人 さんのコメント | 2007年09月23日 20:30 | CID 80721)

を読んで、疑問が氷解した。というか、爆笑した。なんと、引き合いに出しているのがあの小林よしのりである。なんのことはない、一般人さんの一連の発言はジョークだったのだ。
ストレートに橋下弁護士のおかしな言動を批判した文章を書いても味も素っ気もない。そういう場合、見かけ上橋下弁護士を擁護するような文章にしておいて、実はけなしているという表現をするのは読み手に楽しく読んでもらうための方法として普通にあることである。
まあ、引き合いに出しているのが小林よしのりというのはさすがに橋下弁護士を馬鹿にし過ぎている気がしないでもないが(私も一般人さんと同じく橋下弁護士の言動は笑いものにしかならないと思っているが、さすがに小林よしのりクラスまでは言い過ぎであろう)、これがジョークであることを強調するためには適切な人選であろう。
ここまではいいのだが、問題はこれを読んだ他の方の反応である。なんと、これに対してマジレスの嵐。おいおい、君たちジョークもわからないのか
こうなると困るのは一般人さんである。ジョークというのは一種の作品であるから、一般人さんが「あれはジョークだよ」と説明するわけには行かない。ジョークのネタバラシをするのは手品師が手品のタネを明かすようなもので、自分の作品を台無しにしてしまう。もちろん他人もそうであり、私が「一般人さんのコメントはジョークですよ」と教えてあげるわけにもいかない(*2)。
仕方ないので一般人さんはその後、「橋下擁護派の馬鹿がでたらめを書き散らして荒らしている」という役を演じている。コメントをつけないわけにはいかないし(それはそれでジョーク作品の価値を減じる)、ネタバラシするわけにもいかないから仕方がない。まったく、ジョークが通じない人たちにも困ったものである。
ただ、私は思うのだが、一般人さんはもっとジョークがわかりやすくなるポイントを用意するべきだったと思う。たとえばハンドルであるが、「一般人」でなく「馬鹿右翼」にすればもっともっとジョークであることが明確になり良かったと思う(*3)。ただしその場合は一発目のコメントでジョークであることが明らかになるので、オチの「小林よしのり登場」まで一気に持っていく必要があり、それはそれで他の面白みを消してしまうのだが。

(*1)…ブログ主の名誉のためにコメントしておくと、内容が「たわごと」であることはブログタイトルに明記されている。(ちゃんちゃんのたわごと/ちゃんちゃん)
(*2)…そういった意味では、別のブログとはいえこのようなことを書くのは問題があるのだが、一般人さんの名誉のためどうしても一言書きたかったののだ。
(*3)…もちろん、この「一般人」というハンドルが「一般人を自称するガチの人」を元ネタにしているのは理解している。