りゃくごのご

法律の名前には長ったらしいものが多い。「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」とか「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」とか、早口言葉かと言いたくなる文字列がずらずら並んでいる。「地域産業の高度化に寄与する特定事業の集積の促進に関する法律」の改正の際、発音しきれずに舌を噛み切って死亡する国会議員が続出し、そのため改正できず結局廃止されてしまったのは有名な作り話である。
こんな長い名前だと使う方も困るので、たいてい使いやすい略名を使っている。「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」なら風俗営業法または風営法、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」なら独占禁止法または独禁法である。
このような省略形の略名はわかりやすいが、中には知らないとわからない略名もある。次の法律が一般的にはなんと呼ばれているかわかるだろうか。
(1)航空機の強取等の処罰に関する法律
(2)酒に酔つて公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律
正解は、(1)がハイジャック防止法、(2)がよっぱらい防止法である。これらは省略形ではないから知らないとわからない。
しかし長いといっても国会制定法はまだましで、政令等の類はもっとすごい。「水資源開発公団法施行令第24条の2第1項の規定に基づき、利根中央用水事業に係る水資源開発施設の新築又は改築につき負担する負担金に係る同項の主務大臣の定める基準を定める件」(厚労省農水省告示)とか、「地域振興整備公団が行う宅地の造成の事業に係る環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針、環境の保全のための措置に関する指針等を定める命令」(総理府通産省建設省省令)とか、名前が長すぎて何を定めたものかわからない。まさか、それが狙いじゃないだろうな。
大体、シンプルイズベストというぐらいで、名前は短い方がいいに決まっている。落語の寿限無を見ればわかるように、昔からの常識なのだ。実際、昔からある法律はシンプルな名前ばかりである。民法や刑法、商法など漢字たった二文字である。それがいまではこの有様だ。このままいったらどうなるのだ。関係法令名を読み上げるだけで一年かかってしまい、裁判が無駄に長期化したらどうしてくれる。
そうなってはまずいから、法令名をなるべく短くすることを義務付ける法律の草案を考えて、知り合いの国会議員に法案提出してもらうよう働きかけよう。早速法案を作らねば。法律名は、ええと、こんなのはどうかな、「法律名が長すぎると覚えるのに一苦労するし何が書いてあるのか分からなくなるので法律や政令を作る関係者はなるべく短いシンプルな名前を付けるべきなのでなるべく短いできるなら漢字二文字ぐらいの名前を付けるよう法案作成者に義務付けるとともに違反したら何らかの罰則を設けようそうしようということに関する法律」