奈良事件裁判始まる

奈良の大淀病院で起こった妊婦死亡の件についての裁判が大阪地裁で始まった。この件に関しては医師ブログで盛んに取り上げられており、Yosyanさんも六月二十七日付けのエントリーでこの件を取り上げられていた。Yosyanさんは「新小児科医のつぶやき」というブログを開設されているお医者さんで、医療問題についてとてもわかりやすく解説されている。
さてそのエントリーのコメントで、774氏さんが次のように書かれた。

赤ちゃんまで原告にしたら、相手から見るとけんかを売ってると感じますわな。

気持ちはわかる。この赤ちゃんが今生きているのは大淀病院の医師及び国循の医師の努力の賜物である。赤ちゃんにとって被告医師は命の恩人、その恩人を訴えるのは何かおかしいと感じる人がいるのは当然だろう。
しかし、この裁判は「医療ミスで死んだから賠償金を払え」という、損害賠償請求訴訟である。実際には医療ミスなどなかったと思われるが、訴訟の形としてはまともである。
さてこの損害賠償請求権であるが、妊婦本人はすでに死んでいる。死んでいるから損害賠償請求権もなくなるのかといえば、そうではない。損害賠償請求権というのは相続の対象になるのだ。今回の場合、夫と赤ちゃんが妊婦の持っていた損害賠償請求権を相続することになる。「医療ミスで死んだから賠償金を払え」という損害賠償請求訴訟において、本人が死んでいるなら代わって相続人が原告となるのは当たり前のことである。
なので、私としては赤ちゃんが原告に加わっていることを批判するのは、筋違いに思えるのである。
もちろん、赤ちゃんを原告に加えずにやろうと思えばできる。しかし、民事訴訟の目的からすれば少なくとも外見上は「不法行為責任に基づく損害賠償請求訴訟」の形をとるべきであるし、そうである以上、相続人すべてが原告に加わっていることを問題視すべきでないと思う。