福島事件と光市事件を比較してみる

福島大野病院事件のネット上での意見を見回っていたら、次のコメントが目に留まりました。はてな匿名ダイアリーのブックマークコメントなんですが

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://anond.hatelabo.jp/20080820212803
2008年08月21日 kurotokage 医療, 社会, 心
 ブクマが光市事件の弁護団に対する反応と対称的だなぁ。あっちはやるべきことをやった弁護士がささいなこと(ため息をついたとか)で遺族感情を理由にバッシングされてたのに。

確かに光市事件において弁護団が不当なバッシングを受けた、ひどい例では脅迫状を送りつけたりブログ上で「死ね」とか「死んでくれ」とか言い放っていた馬鹿もいたことは知っていますが、はてなにおいてはその類の人はさほど目立たなかったという印象があるんですよね。もちろんはてなにおいてもゼロではありませんが(どんな集団にも馬鹿はいる)、Yahoo!ブログやアメブロ、関西どっとコムや楽天ブログに比べるとはるかにましな印象です。
とはいえ、私が見た範囲なんてたかが知れているわけですから、もう一度光市事件についてのブコメを調べてみました。最初ははてな匿名ダイアリーブコメを調べてみたんですが、光市事件について触れているはてな匿名ダイアリーはあまりありません。ブコメも当然あまりありません。なのでkurotokageさんのブックマークから司法タグで拾い出してみました。そうすると、以下のブコメが見つかりました。

なるほど、確かに変なコメントが散見されます。ざっと見ただけでも

2008年04月24日 Gesaku_G
 これ、気になっていました。ちょっとほっとしました。でも、犯人だけ死刑、じゃ、生ぬるい・・・よね?あ、こういうことは言っちゃいけないよね、相手はプロだからね。こわいこわい。
2008年04月23日 north_god
 唯一加害者に同情できるとしたら、死刑存置/廃止論者の思想戦に利用されたことだ。公平に速やかに極刑を受けれるべきだった。
2008年04月23日 xevra
普通にやってりゃ無期懲役だったのに、頭の弱い弁護団公序良俗を乱して死刑を呼んだ。弁護団GJとしか言えない。被告は弁護団の被害者。
2008年04月22日 alharascholar
 死刑って人が死ぬんだぜ、何でそんなにはしゃげるんだ……と思ったが、事件概要を読み直して、判決文を読んで「人権ゴロ弁護屋藪蛇ざまあwwwww」と思った。

これはひどい。これだけ見たら単なる馬鹿の集まりです。でもこのページのブックマーク数は全部で88。どんな集団にも馬鹿はいるわけですから、この程度なら別にたいしたものではないでしょう。福島事件と比べて、対照的といえるほどではないと思います。
とはいえ、ブコメ以外も含めて福島事件の弁護人と光市事件の弁護人に対する反応を比較してみると、確かに違いがあります。光市事件の弁護人に対するバッシングはひどいものでしたが、福島事件の弁護人は(私の確認する限り)まったくバッシングされていません(*1)。
福島事件も光市事件も否認事件であることは同じですし(光市事件は一部否認)、被害者に何の落ち度もないところ、遺族が被告人に強い処罰感情を持っているところも同じです。特に福島事件では遺族が被告人に対してお墓の前で土下座させたりしていますから、ひょっとしたら光市事件の遺族より処罰感情が強かったかもしれません。さらに光市事件は一部否認なのに対し福島事件は全面否認(無罪主張)ですから、被害者の立場や遺族感情のみを元にすれば、福島事件の弁護人の方がよりバッシングされていても不思議はありません。じかし幸いなことに、そのようなことは起こりませんでした。
となると福島事件の弁護人に対する反応と光市事件の弁護人に対する反応の差は、被害者に対する感情ではなく被告人に対する感情の差ではないかと思います。被告人と弁護人を区別して考える能力に欠ける人は(悲しいことに)実在しますから。そう考えると福島事件は、いわゆる自称一般人が採用している「確定有罪の原則」の例外だったのでしょう。


(*1)…光市事件で弁護人をバッシングしていたブログが福島事件を取り上げていれば比較しやすいのですが、いくつか見て回ったのですが福島事件を取り上げているブログはありませんでした。残念ですが、これはブログ主が福島事件に興味を持たなかった以上仕方ありません。