トンデモ国会議員

NATROMさんの日記にとある国会議員のものすごい発言が紹介されていた。

その国会議員は風間直樹参議院議員。NATROMさんが紹介したそトンデモ発言の一部を以下に再掲しよう。

 今私が指摘をしました、どうも新しい原理によって起きているのではないかといいますのが、この資料の一―二でございます。ここに化学式を書いております。私もどちらかというと文系なものでございまして、余りこういったものには造詣が深くないんですが、調べてみますと、このFe+H2O、Feというのは鉄でございます。H2Oは御承知のとおり水でございます。これが触れるとH、つまり水素を発生させる、こういう原理がございます。
 これはどういうことかといいますと、地中に水を注入し、そこで地中にあった鉄ないし鉱分と水が接触した結果、水素が発生すると。これは化学的な原理として当然なわけでありますが、発生した水素が地中深くで滞留をすることによって水素原子が自身で核融合を起こして、それが地下爆発につながっているのではないかという、これが最近唱えられている新たな地震の理論でございます。
 これ簡単にどういうことかと申しますと、今日こちらにホッカイロを持ってきたんですが、この原理と同じでございます。このホッカイロを今私が封を開けて取り出しますと、空気中に含まれている水分とこのホッカイロの中の鉄分が反応して熱を生じます。

素晴らしすぎてめまいがする。石原ト知事も真っ青だ。「私もどちらかというと文系」って言ってるが、理系の素養がちょっとはあるつもりか。こんな発言をする理由を文系であることにしないでくれ。私も文系だが、こんな間抜けな思い込みはしていない。地殻の鉄なんて殆どが酸化鉄だろう。酸化鉄と水でどうやって水素を発生させるのか。それに、その程度の圧力で水素原子が核融合を起こすなら、木星はとっくに太陽だ。小松左京に謝れ。地震のメカニズムなんて、地下で大ナマズが暴れるからだととっくの昔に解明している。ここまでトンデモ発言が並ぶと、今日持ってきたというホッカイロも本当にホッカイロかどうか怪しいものだ。ホッカイロは白元の商品名である。ホッカイロと見せかけて、実はホカロンじゃないだろうな。佐川の宅急便とかセガファミコンとかいうオヤジと同じ匂いがするぞ。
これが徳間書店とかたま出版の出版物の中の記載なら驚くには値しないが、これはれっきとした第168回国会災害対策特別委員会の中の発言なのである。国会といえば国権の最高機関(政治的美称)であり唯一の立法機関(例外あり)である。日本は議院内閣制であり国会の意向が政策に反映されやすいのだから、国会でこんなコントのようなやりとりをされては困る。
大体、政治家が合理的思考を無視してトンデモに走れば国家は疲弊し国民が困ることは、江戸時代の日本をみれば一目瞭然だろう。将軍綱吉の時代に施行された「生類憐みの令」がどれだけ国民の生活を疲弊させたか、日本人なら知ってるだろう。この例だけではない。江戸時代の日本は封建社会であり身分社会であったから、武家階級のわがままでどれだけ下々の民が泣かされたか。名奉行といわれた大岡越前守も例外ではない。彼は、スリのテクニックを芸術と認め、営業許可証を発行するという愚行をしているのだ。スリはうそつきのなれの果てである。こんなトンデモ判決が許されるのか。もっともその許可証なるもの、高さ三尺幅一尺の道場の看板ぐらいの大きさがあり、この許可証を持たずしてスリを営業した場合は厳罰に処する、と言い渡したらしいが。


しかしまあ世の中を見渡してみればこの程度のトンデモはあちこちにあふれている。進化論は誤りで人は神が自らに似せて作ったのだという創造論、角の三等分問題や立方体倍積問題、円積問題を解いたという自称数学者、宇宙人に会ったとか交信しているとかいうコンタクティやチャネラー永久機関の発明者など、世にトンデモの種は尽きない。中にはニュートン力学は間違っていると主張する人までいる。そいつに言わせると、ニュートン力学は物体の速度が遅いときに成立する近似解にすぎず、光速に近づくほど正しい解との差が大きくなるとか。たしかアインシュタインとかいったっけな、そのトンデモさんは。
このような世の中であるから、一切トンデモにはまるなというのが難しい注文であるのはわかる。わかるが、国民の生活を考えれば、政治家にはきちんと合理的思考を貫いて欲しい。それが国民から政治を委託された政治家の使命であろう。
それにしても、こんな発言なかったことにしておけばよかったであろうに、わざわざ記事にしてネットに乗せて叩かれるはめになったのは皮肉なものである。記事も書かずば打たれまいに。