ウェブそもそも論(の謎×16)

「WWWを『特定の人に読まれたくない』『特定のサイトからリンクされたくない』という立場で使うことはできるし、運がよければその願いが叶うこともあるけど、仮にその願いが叶わなくても自分の責任でしかない。『そういう立場で使うことは制限されていないのだから、願いが叶わなかったときに他人に責任を転嫁してもよい』という人は自己責任という言葉を軽視している」という点については御理解いただけたようです。まあ、そんなこともわからない責任感の欠如した人となら最初から話などできないわけですが。

リンクをした人はリンクをされた人からリンクを止めるように言われたら、「それをしない自由が制限されていないにもかかわらず、その人を納得させることなくその人の希望を打ち砕くことをしている」という事実を背負うことを(相手を納得させるかリンクを外すことによって)回避するか、(どちらもすることなく)その事実を背負うか、のどちらか一方を自身の自由裁量のもとに必ず選択しなければならない

ややこしい書き方をされていますが、結局、リンクされた側からリンクを止めるように言われた場合、リンクした側は

  • (1)リンクを削除する
  • (2)リンクしたことについて相手の同意を取ってリンクを継続する
  • (3)リンクしたことについて相手の同意を取らずリンクを継続する

の3つから対応を選択する。その選択はリンクした側が行うことであり、リンクされた側が行うことではない。
ということですよね。普通のことだと思いますけど。

いったいどのような論法を用いれば、ローカルではない形で「リンクを止めるように言うことが不当な行為である」と言い得るのでしょうか。

「リンクを止めるように言う」といってもいろいろありまして、

  • (1)許可のないリンクは不当なものだから削除して、と言う
  • (2)恐縮ですがどうかリンクを外してくれませんか、と言う
  • (3)本件リンクは存在しない方がよいのではないか、と言う

などが考えられます。
(2)や(3)については別に問題ありません。もっともそのお願いや提案を受け入れるかどうかはリンクした側が決めることですし、受け入れられなくてもリンクした側に文句を言うことはできませんが。尚、リンクを削除してしわ寄せが行くのは読者なので、そのお願いや提案の理由がリンクされた側の個人的な願望でしかない場合は受け入れられない可能性は高いです。問題は(1)でして、「許可のないリンクは不当だ」という根拠には「マナー違反」とか「法律違反」とかいろいろ持ち出されますが、私の9月24日のエントリーのちゃんちゃんさんの場合は「マナー違反」を持ち出しています。ちゃんちゃんさんの論点は「私(ちゃんちゃんさんのこと)は許可なくリンクされることが嫌である。相手の嫌がることはしないのが社会のマナーなので許可のないリンクはマナー違反である。」ということです。しかしこれは失当です。WWWに置いた文書は公表されたものであり、誰でも自由に読めますし、リンクできます。WWWというのはそのための場所です。WWWを「特定のサイトからリンクされたくない」という立場で使うことはできますが、その願いが叶わずに嫌な思いをしたとしても、それは「特定のサイトからリンクされたくない文書をWWWに置いた」ちゃんちゃんさん自身の責任であり、他人に責任を転嫁しようとするのは筋違いです。これは単にちゃんちゃんさんが「自己責任」という考え方を身につけていなかった(言葉を選ばずにいうと「甘えん坊」であった)だけです。つまり、ちゃんちゃんさんの主張は前提において失当であり、採用されなくても仕方ありません。「前提において失当であり採用されない主張」が不当な主張であるのは当たり前の話であって、ローカルな話ではありません。

  • ウェブは「そのリンクが存在するほうか存在しないよりもウェブのネットワークトポロジーとして望ましいかどうか」についての議論にリンクをされる側が参加することを禁止するという意図のもとに設計されている

ということは言い得るのでしょうか。

これは前記でいう(3)の主張ですね。別に構わないのではないでしょうか。(2)や(3)の主張が構わなかったとしても、それは(1)の主張の当不当を左右しません。
ちなみにちゃんちゃんさんの場合でも「筋違いなお願いであるのは理解していますがどうかリンクを外して頂けませんでしょうか」というお願いとか「当該リンクは当該文章において全く必要がないので外した方がよいのではないか」という提案なら話は違ったんですよ。結果が変わったかどうかは不明ですが。

  • ブックマークコメントを見ての追記

mintanさん
「命令」なのか「要請」なのか「提案」なのか明示しないで議論をしちゃいかんよね。まぁ明示した時点で結論でちゃうんだけど

これを読んで、くっぱさんが勘違いしたらまずいなあと思ったことをひとつ。まず前置きとして、他人がなんらかの行為した時にそれが正当な行為であるのにもかかわらず不当な行為であると論うのは不当です(ただの侮辱です)。また、他人に「しなくても何の問題もないこと」をするように命じるのは不当です(そういう場合は頭を下げてお願いすべきです)。これはただの一般論で、リンク云々とは関係ありません。
さて、ちゃんちゃんさんは「希望」といってますから、形としては「お願い」になっています。他人になにかお願いするのに、正当な理由はいりません。正当な理由があるなら、わざわざお願いしなくても堂々と要求すればいいのですから(処世術として「堂々と要求できる」ことを「頭を下げてお願い」することを否定しませんが)。しかし、「お願い」に正当な理由はいらないからといって、「お願い」ならば何を言ってもいいわけではありません。ちゃんちゃんさんは私の行ったリンク行為を、さも不当なこと(マナー違反)であるかのように論っており、それは不当です(前置きした最初のパターンです)。「ちゃんちゃんさんは『お願い』してるんだから不当な発言ではないのではないか」と勘違いされたらいけませんので念の為。
…もっとも、そういった意味ではちゃんちゃんさんの発言の不当性の根元は「リンク禁止要請にあるわけではない」とは言えます。たとえばちゃんちゃんさんの発言が「無許可でリンクするのはマナー違反です。人として問題のある行為です。良心の欠片も見られません。私は心が広いのでリンクを削除しろとは言いません。感謝してください。」だったとしたら、リンク禁止を要請してはいないけれど、やはり不当だからです。


念の為)
尚、具体例を挙げた方が説明しやすい都合上、ちゃんちゃんさんの件を例示していますが、ちゃんちゃんさんの当時の発言が不適切なものであったことは本人がすでに認められ、私に謝罪もしています。なので、本エントリーのいかなる言葉も現在のちゃんちゃんさんを批判するものではないことを明記しておきます。当時のちゃんちゃんさんを「責任感がないなあ」と批判することはできますが、現在のちゃんちゃんさんにその評価はあてはまりません。「甘えた」が直っているかどうかは不明ですが、他人に迷惑を掛けない限りにおいて、「甘えた」ということは欠点とはなりえません。