タイアップ機に思う

2007年6月で、かなりの4号機の検定が切れる。俺の空のように10月で検定切れになる(地方差あり)機種もあるが、原則としてこの6月が大抵の4号機の設置期限である。そのためメーカーはこの時期に多くの5号機新台をリリースし、ホールも入れ替えラッシュとなって、新しい5号機が続々導入されている。私の近くのホールでもいくつかの4号機を撤去し、5号機に入れ替えた。うる星やつら、熊酒場、アントニオ猪木も燃えるパチスロ機などである。
さてこのアントニオ猪木も燃えるパチスロ機であるが、これは文章ではない。機種の名前が「アントニオ猪木も燃えるパチスロ機」なのだ。つまりアントニオ猪木も燃えるパチスロ機と言う名のパチスロ機なのである。このアントニオ猪木も燃えるパチスロ機、名前の通りプロレスラーアントニオ猪木氏とのタイアップ機である。猪木シリーズは4号機の時代から出ており、今回が3作目(新日本プロレスまでもがパチスロ機を入れると4作目)であり、初代は4号機AT機のアントニオ猪木と言う名のパチスロ機である。言うまでもないが、これは機種名が「アントニオ猪木」という意味ではない。機種の名前が「アントニオ猪木と言う名のパチスロ機」なのである。つまりアントニオ猪木と言う名のパチスロ機と言う名のパチスロ機である。
レスラーは数多くいるが、パチスロのタイアップ機を出しているレスラーは猪木氏だけである。パチスロだけでなく、パチンコのタイアップ機も出ている。アントニオ猪木と言う名のパチンコ機である。言うまでもないが(以下略)。さて、なぜ数多いレスラーの中で猪木氏だけタイアップ機が出ているのか。もちろんそれは、猪木氏が偉大なレスラーであるからである。若い方には猪木氏の偉大さを知らない方もおられるだろうから、ここにひとつ、猪木氏の偉大さを示す話を紹介しよう。それは1976年6月26日、日本武道館で行われた究極の異種格闘技戦、史上最強のボクサーであるモハメド・アリ氏との対戦である。
猪木氏は試合が始まると、リングに寝そべってしまった。もちろんこれはアリ氏のパンチを受けないための猪木氏の作戦である。寝技になればレスラー有利なのは明白であり、寝そべったまま試合すれば相手のパンチを受けることなく寝技に持ち込める。まあ寝そべったまま待ってるだけだと試合にならないのであるが、猪木氏はこの体勢からでも相手に対する攻撃方法を用意していた。寝そべった状態から立ったままの相手の足にローキックを放つのである。これにはアリ氏も驚いたに違いない。なにせ相手は寝そべっているのでこちらからは攻撃できない。攻撃できない状態で、一方的にキックを食らうのである。とはいえアリ氏も史上最強のボクサーと言われた男である。そのような不利な状態からでも、負けることはしなかった。時間いっぱい戦い、引き分けに持ち込んだのである。
さてこの試合で猪木氏が使った相手の足を狙うローキックであるが、後に名前がついている。その名前は「アリキック」である。これはすごいことであるレスリングの技で、人の名前が付いている技は少なくない。ロメロスペシャル、ドラゴンスープレックス、秋山クラッチなど枚挙にいとまがない。しかし、これらはすべて技を編み出した人間の名前が付いている。食らった人間の名前が付いている技は、レスリング技多しと言えども「アリキック」だけである
…って、これは猪木氏の偉大さではなくアリ氏の偉大さの話のような気がする。考えてみれば当たり前か。猪木氏がいくら偉大なレスラーと言え、アリ氏にはかなわない。アリ氏は、ボクシング史上最も偉大なボクサーだからである。
アリ氏の偉大さを示すエピソードをひとつ紹介しよう。時は永禄12年、戦国時代のことである。当時アリ氏は、松永久秀氏の招きにより日本を訪れていた。松永氏は大のボクシング好きであり、世界チャンピオンのアリ氏をひとめ見たかったのである。さてアリ氏の滞在中に、松永氏の主君である三好氏から筒井順慶討伐の命が下った。日本の戦に興味を持っていたアリ氏は、この征伐に同行した。この松永軍と筒井軍の戦い、序盤は一進一退の攻防が続いていた。しかし松永軍は攻め込んだ側である。相手の地の利もあって、徐々に不利な状況に陥っていく。とうとう松永軍の前線が崩れ、総退却やむなしの状況に陥った。そこで現れたのが、松永軍に同行していたアリ氏である。
アリ氏は、招いてくれた松永軍が不利と見るや、いきなり前線に飛び出し総大将である筒井氏に向かって走り出した。筒井軍からは矢が雨あられと振ってくるが、アリ氏は蝶のように舞う華麗なフットワークでそれらをすべてかわしてしまう。そして総大将筒井氏の前に躍り出て、強烈な右フックを一発食らわせた。これで筒井軍は大混乱に陥ってしまった。指揮系統の中核である総大将がやられたのである。混乱しないわけがない。そしてこの混乱を見た松永軍は、いったん崩れた軍勢を建て直し、筒井軍に襲い掛かり、逆に総退却させてしまった。あの大和を統べていた筒井氏をたった一発のパンチで葬り去ったのである。アリ氏の偉大さがわかるというものだろう。
まさに「戦場の筒井もアリの一発から崩れる」である。