世界最短最軽量

俳句とは五・七・五から成る定型詩であり、これは世界最短である。短歌が上代からある古いものなのに対し、俳句は比較的近代に成立した文芸である。
俳句で大きな役割を果たしているのが季語である。たった17文字の詩の中で通時的共時的機能を引き出してくれるからである。季語にも「春」とか「夏」とかといった、ひとめで季節がわかるものから、なんらかの知識がないと季節を感じないものまでさまざまである。たとえば「競馬」といえば夏の季語なのであるが、これは平安時代以来の神事である賀茂競馬を指しているからで、現在のJRAが主催する中央競馬等を思い浮かべてしまうと全然ピンとこないであろう。
さらに、「春」という文字が入っているのに春の季語ではないとか、「秋」という言葉が入っているのに秋の季語ではないとかいうものもある。たとえば「竹の春」といえば秋の季語であるし、「麦の秋」といえば夏の季語だ。これらは竹や麦の特性を知らなければ意味不明だろう。
また、同じ言葉の季節感も時代とともに変わっていく。「ビール」は夏の季語であるのだが、2006年の実績では最もビール出荷量が多い月は12月である。昔は7、8月の暑い盛りが最も多かったのだが近年では忘年会シーズンである12月がそれを上回ってしまった。そのうちビールは冬の季語になるかもしれない。
実は、そのように示す季節が変わってしまった季語というのは実在する。それは「天皇誕生日」で、1980年代の終わりに春の季語から冬の季語へと変わってしまった。元々天皇誕生日が春の季語だったことは想像に難くない。昔、天皇天照大神の子孫であり現人神といわれていた。天照大神は太陽神であるから、「太陽の誕生→春の始まり」という発想で春の季語になったものであろう。それが現在では冬の季語だ。なぜ変わってしまったのであろうか?いったい1980年代の終わりに何があったのであろうか?疑問に思ったので調べてみたところ、ひとつの事実がわかった。
1989年7月の第15回参議院議員通常選挙で、最大与党である自由民主党がたった36議席しかとれず惨敗していたのだ。自民党が惨敗したということは、対抗勢力である(いわゆる)左翼の人達の活動が当時活発化したであろうことは想像に難くない。左翼の人達はたいてい天皇制に反対している。彼らにとっては天皇制の時代はまさに冬の時代そのものである。
彼らは自民党が惨敗したことに勢い付き、天皇制廃止のために多くの活動をしたに違いない。その中に天皇誕生日を春の季語から冬の季語に変えることも入っていたのではあるまいか。おそらく日本俳句協会(NHK)に圧力をかけ、天皇誕生日を冬の季語と認めさせたのであろう。現在天皇誕生日が冬の季語として扱われているということは、彼らの活動は成功したようである。
それを知って、ようやく長年の謎が解けた。(いわゆる)右翼の人達がNHKへのバッシングを執拗に行う理由である。右翼の人達はNHKを売国団体とまで言って非難する。私としては日本固有の文芸を守る俳句団体がなぜ売国団体と非難されるのかさっぱりわからなかったが、理由がわかればなるほどである。おそらく現在、右翼の人達は天皇誕生日を春の季語に戻すために全力を尽くしているに違いない。
さて、ここで予言してしまうが、おそらくこの右翼の人達の活動は成功するだろう。つまり、いつかまた天皇誕生日が春の季語に戻るということだ。それがいつかはわからない。いつかわからないが、いつかその日は来るはずである。