産科医絶滅

昨日の日記にも書いた福島の件や5月24日の日記で少し触れた奈良の件などがあり、産科医は絶滅へと向かっている。まあ、産科医絶滅は厚生労働省の方針のようであるし、現政府を国民が支持している以上、産科医が絶滅することは民主主義国家として望ましいことだ(棒読み)。まあ産科医が絶滅するのは(多くは患者側である)国民の選択の結果だからいいとして(その責任は患者側である自分達がとるのだから)、問題は産科医が絶滅した後の周産期医療である。
ご存知の通り、日本の周産期死亡率は世界各国と比較して格段に低い。これも皆、産科医の努力の賜物である。しかし、産科医が絶滅してしまえばその恩恵に与れなくなる。
このページを見れば諸外国と比べて日本の周産期死亡率が低いことが、さらにそれが年を追うごとにどんどん良くなっていることがわかる。しかし、産科医がいなくなって周産期医療が行われなくなれば、これが元に戻ってしまうのは当たり前のことである。前記ページの表では1970年までしか見られないが、もっとひどい数値になるだろう。
どれぐらいの数値になるであろうか?これは他の哺乳類を見てみれば参考になるかもしれない。と思って哺乳類の子の死亡率などを調べてみたのだが、その結果驚くべき事実を知った。子の死亡率が非常に低い動物が一種いるのである。それも、われわれと同じヒト科動物に。
その動物とは、オランウータンである。オランウータンの子の死亡率はとても低く、数%と報告されている。もちろん数%というのは人間と比べれば遥かに高い数字であるが、人間の場合は産科医の不断の努力によって達成されている数値であり、比較の対象にはならない。オランウータンの子の死亡率がこれほどまでに低いのは、おそらく彼らがなんらかの子の死亡率を抑えるノウハウを会得しているからであろう。
そこで、産科医絶滅後の周産期医療について、名案を思いついた。産科医が手掛けていた周産期医療を、オランウータンに替わりにやってもらうのだ。もちろん、そのままというわけにはいかない。オランウータンは非常に知能の高い動物であるが、さすがに理系最高峰の職業である医業させるのは無理がある。なので、ここは医療行為ができるようにオランウータンに進化してもらおう。
まず、人間が進化してきたと思われる環境(広大な草原)を用意し、一定数のオランウータンをそこに住まわせる。オランウータンは樹上性の動物であるからそのままでは環境に適応していない。なので、環境に適応するように進化するであろう。人間が進化してきた環境であるなら、人間と同程度の能力を身につけるように進化することは十分に期待できる(収斂進化というらしい)。医療行為ができるぐらいまでに進化するのに要する時間はどれぐらいであろうか?500万年?1000万年?これは、チンパンジーと人間の共通祖先が別れてから現在までだいたい500万年らしいので、余裕をとって1000万年としておこう。
そしてタイムマシンを作って、1000万年後の世界に行ってくる。そこには、1000万年の時をかけて(医療行為ができるぐらいに)進化したオランウータンがいるはずである。彼らに現代に来てもらい、周産期医療をやってもらうのだ。
なんという名案であろうか。彼らには元々持っている「子を死亡させない」ノウハウがある。産科医の替わりは十分勤まるだろう。
1000万年の未来から、人間の周産期医療を救うために時を越えてやってきたオランウータン。まさに“時をかける猩々”である。