朝昼晩と梅を食え

都々逸というのは七・七・七・五からなる短詩型の文芸であるが、その中に「○○殺すにゃ刃物はいらぬ」で始まるものがある。
医者を殺すにゃ刃物はいらぬ 朝昼晩と梅を食え
土方殺すにゃ刃物はいらぬ 雨の三日も降ればよい
などである。
都々逸は江戸末期にまで遡る。前者二句は古いものであるが、比較的最近にできたものもある。
株屋殺すにゃ刃物はいらぬ 寄り引き同値でザラ場なし
デブを殺すにゃ刃物はいらぬ 日照り三日も続きゃよい
担当殺すにゃ刃物はいらぬ 原稿落として知らん顔
最後のは漫画家の魔夜峰央さんの作で、「担当」とは担当編集者のこと(inパタリロ)。しかし、これは漫画家本人にとって諸刃の剣だろう。自身の漫画家生命も終わってしまいそうだ。
このての都々逸で有名なものに
噺家殺すにゃ刃物はいらぬ あくびひとつで即死する
というのがあるのだが、これを見たときにふと立川談志師匠の話を思い出した。談志師匠の独演会で、居眠りした客を退席させたという話だ。
いやあ、すばらしいですね、師匠。師匠の高いプロ意識が伝わってきます。(棒読み)
芸を披露している最中に居眠りされて腹立つのはわかるけど、噺家が客に居眠りされて怒るほうがおかしいのであって、身を入れて聞けないような面白くない噺を聞かせたことを恥じるべきだろう。客に怒る前に自分の未熟さを恥じろ。…などと考えてしまうのは私が大阪人だからであろうか?
しかし、こんな人の噺をありがたがって聞く人も世の中にはいるんだよなあ…