被告人質問での出来事

今枝弁護士のブログで、被告人質問にて起こったある出来事が取り上げられていた。
検察官は、僕をなめないでいただきたい!

検察官が、「私は見たんだが、あなたは、先ほど、遺族の意見をメモしながら、すーっと1本線を引いて消したね。あれはどういうことか。」と聞いたのに対し、そのメモを示し、「そんなことはしていない。」と弁明した。

被告人は、そのメモを、検察官と被告人に示し、そのような線は入っていないことを示した。
弁護人が、検察官が新たな濡れ衣を着せようとしたと反発し、「検察官は、誤りについて、撤回し謝罪されたい。」としたのに対し、検察官は、「その必要はない。」と返した。

検察官が被告人への偏見から勘違いを起こしたことに、怒りを覚えた私が、被告人に、「君に対し厳しい見方をされてこういう誤解も生じるから、これまでも、そしてこれからも、君に対してこういう誤解や濡れ衣(※検察官が、メモに線を引いたと非難したことを象徴)は、ずっと続いていくだろうが、その中でも君はくじけず強く生きていけるのか。」と聴いたところ、被告人が「はい。・・・検察官は、僕をなめないでいただきたいですね。」と答えた。

この被告人の言葉をどう評価するかは聞いた人の自由である。それとは別に私が問題と思うのは、この検察官だ。
この検察官は、何を思ってそんな言い掛かりをつけたのであろう。単なる勘違いであれば撤回し謝罪すればすむ話であるし、そうすべきだ。被告人が罪のない二人の人間を殺めたことは事実であろうが(本人も殺めた事に関しては否定していない)、だからといってこのような言い掛かりに等しい勘違いをしても撤回しなくてもかまわないなどという話はありえない。被告人の犯した罪と検察官の勘違いは別個に評価されるべきものだ。にもかかわらず、この検察官は弁護人の撤回、謝罪の求めに対して、「その必要はない」と返したそうである。「被告人の犯した罪と検察官の勘違いは別個に評価されるべき」ということは検察官なら当然知っているはずである。なのに必要がないと返したということは、もう意図的に言い掛かりをつけたとしか考えられない。いったい何を目的にそんなことをしたのか。
この発言を聞いて、多くの人は何を思うだろうか。おそらく、「被告人は何も反省していない」と考えるだろう。もし検察官が被告人を挑発しこのような発言を引き出し、被告人が反省していないことを明らかにしようとしてしたことならば、許せないことである。遠山の金さんにでもなったつもりか。検察官は公益の代表である。そのような姑息なことはせずに、堂々と論陣を張ってもらいたい。